『まだ温かい鍋を抱いておやすみ』
彩瀬まるさんの作品。
食べ物をテーマにした短編集である。
ミックスミックスピザの話が印象に残っている。
なんでいけないことをしているときのピザってこんなにも背徳的でおいしいのだろう。
油がぎとぎとしていて。
うーん、何でだろう?
印象に残った文。
こういう普段の生活ではまったく接点のない人たちの集まりは気楽でいい。
長い沈黙だった。骨だの殻だのを取り除かなければ食べられない料理を前に、どこから手を付けようか迷う人みたいだった。
ジャグリングのようになめらかに投げ交わされていた会話のボールを、自分の手元で止めてしまっている自覚がある。
「家庭の食卓って、忖度の積み重ねでできてるよね。自分がこれを食べたい、以外の理由で組み立てた料理を毎日作り続けるって、考えてみると結構クレイジーだよ。しかもそうして作った料理を、家族が喜ぶかっていうと微妙なわけだし」
「子供って、親からすれば体の外側にある急所なんだよ。内臓みたいなもん。内臓を潰されたら死ぬか、死にかけるだろ。だからその友人も、死にそうなんじゃないか」