『人生教習所』
垣根涼介さんの作品。
小笠原諸島で開催される人生再生セミナーに参加する人々の物語。
参加する人々は、休学中の東大生である浅川太郎、元ヤクザである柏木真一、人間関係に悩んできた森川由香、すでに定年を迎えた竹崎などである。
最初は険悪な雰囲気であったが、徐々に打ち解けていく様子に安心した。
小笠原諸島の歴史についても学ぶことができた。
半年後の同窓会の様子も続きで読みたいと思った。
印象に残っている文
高校や中学時代、沈黙を恐れ、面白くもないのに会話のための会話を続けるクラスメイトが傍目に薄ら寒く見えていたのと同様、その時々の感情に嘘をつく人間の言葉は、たとえ文面でも相手に伝わるものだ。
文字とは不思議なものだ。真摯に書かれたものになるほど、ある意味、それぞれの人間と直接会話を交わすより、その当人の人格を如実に表す。
この年代ーーぼくらの世代の女の子って、いつもこうだ。何かと言うとすぐにカワイイを連発する。たぶん語彙が少ないせいだ。もちろんみんながみんなそんなわけではないが、多少賢そうな女の子も、集団の中に入ったりすると、途端にこの言葉を使うようになる。その場の雰囲気から一人だけ外れることを恐れている。
「柏木さん、職業は関係ないと思いますよ。オリジナルな人は、やはりどの業界にもいるでしょう。むろん、業界によって、その割合に増減はあるかもしれませんが」
「そうするうちに、なんとなく自分がせせこましいことで悩んでいるなあ、自分のことだけで悩んでいられるのは、ある意味幸せなのかなあ、って。そう感じたんです」