『ヨモツイクサ』
知念実希人さんの作品。
過去に家族が突然失踪してしまった茜。禁忌の場所である「黄泉の森」に人喰い熊がいるという噂を聞いて、森に入っていく。
熊の恐ろしさがここまで語られた本はなかったと思う。生きたまま食べられる地獄、それを見てしまうことも一生トラウマになるだろう。
「山で生水を飲んではいけない」という言葉は聞いたことがあったが、それがなぜなのかは知らなかった。理由を知って、今後絶対飲まないと強く誓った。
ラストは衝撃的だった。
印象に残っている文
他の臓器に転移を認めたがんは、一般的には手術による根治が期待できない。しかし、大腸がんの肝転移は、両方の病巣をしっかりと切除できれば根治の可能性が十分にある数少ない病態だ。
「ヒグマは図体がでかいし、動物園なんかじゃ寝ていることが多いから、ノロマな動物だと思っている素人が多い。とんでもない間違いだ。奴らはネコみたいに俊敏な猛獣だ。」
銃刀法では誤射を避けるため、獲物を確認するまでは弾を装填してはならないと定められている。だからこそ、猟師たちはいつでも装填できるように指に弾を二発ほど挟んだまま銃を構えるのだ。
山には沢も多いが、決してその水を飲むことはできない。キタキツネのフンに混じって排泄される、エキノコックスの卵が含まれているかもしれないのだ。もしその卵を口にすれば、エキノコックスの幼虫が体内で孵化し、長い年月をかけて肝臓や脳に嚢胞を作って命を失う。