『東京ポロロッカ』

原宏一さんの作品。アマゾン川の「ポロロッカ」のように多摩川で逆流が起こるという噂が流れ、それに翻弄される人々を描いた話である。


報告書を書き直すように求められたが可哀想だと感じた。もし自分だったら、相手の言い分に従ってしまうと思う。

田園調布のお手伝いさんの話が印象に残っている。信頼している相手から裏切られてしまうというのは、相当ショックなことだと思う。その後何かいいことが起こってほしいと感じた。

何気ない噂に尾ひれがついて大きな問題になるというのが、現実にも起こりそうで怖いと感じた。


印象に残っている文

いまどきは最初から串に鶏肉が刺してある業務用串も安く出回っているが、河嶋はそういうものは使わない。焼き鳥は肉の刺し方で味も変わるから、肉屋で仕入れてきた鶏肉を自分の手で一口大に切り、自分の手で一本一本竹串に刺していく。

やんわりと断った。怪しい者ではないと自分で言うやつほど怪しいやつはいない。

「そばにいてやれないのは仕方ないことなんだから、そうやって自分を責めちゃだめ。ただ、なぜママはそばにいてあげられないのか、そこをきちんと納得させてやっているかどうか、それが大切」

ひとの人生なんて早い話が不動産価格と同じようなもので、その時期その時期、さまざまな事情や空気に翻弄され続ける。それでも、母と子の二人がきちんと繋がってさえいれば、なんとかなる。きっと幸せに生きていける。

「たとえわかりきっていようが、調査報告書があるってことが大事なんだ。やつらにとっちゃ報告書なんてもんは道具だ。自己保身の道具、政策遂行の道具、政治家籠絡の道具、住民説得の道具。この報告書に基づいてちゃんとやってます、てな言い訳さえ立てば、報告書が正しいかどうかは問題じゃない」

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