『彼女のスマホがつながらない』
志駕晃さんの作品。
鎌倉の由比ヶ浜で若い女性の全裸死体が発見された。被害者はパパ活をしていたようで、警察はパパやパパ活仲間に話を聞く。
過去の出来事と共に語られているので、当時の出来事が懐かしいと思いながら読んだ。
パパ活は男と女の騙し合いがあり、女と女の勝負も激しいものだと学んだ。
遺体や殺人に関する知識が多く書かれていたように感じ、知らないことが多くあった。
印象に残っている文
『鈴木京香、石田ゆり子、アラフィフ美人女優がぞっこんのパーソナルトレーナー。その秘密のエクササイズとは?』「何だそのネタは? タイトルは魅かれるけど、何か特別なエクササイズがあるのか」「もともと美しいからだと思います。本当にエクササイズだけで美しくなるなら、とっくに私がやってます」
死体が浜辺で発見された場合、まずは自殺を疑う。死体は全裸で発見されたが、服を着たまま海に入っても、波や潮の力で衣服が脱げてしまうことがあった。
「死体に重りを付けて海に捨てれば、浮かび上がってこないと思うのは素人だ。人間の体には肺という強力な浮袋があり、多少の重りを付けてもやがては水面に浮かび上がってしまう。さらに腐敗が進むとガスが発生するので、死体にはさらに強力な浮力がつく。死体をドラム缶に入れてコンクリート詰めにして海に捨てたが、そのドラム缶ごと浮かんでしまったという話があるほど、人間の死体から出るガスは強烈なんだ」
「パパ活という聞き心地いい言葉を使ってはいるけど、実際は愛人マーケットでの仁義なき女の戦いなの。太パパが欲しいと思うんなら、ライバルは超一流のホステスやキャバクラ嬢だと思った方がいいわよ。本当ならばただの女子大生が、そんなプロの女たちに敵うはずはないと思わない?」
「桜鯛って言うけれど、そういう種類の鯛がいるわけじゃないんだよ」
「若者の貧困というよりは、親の経済力の低下が問題なんです。昔は大学の授業料ぐらいは親が払うことができましたが、日本経済が停滞しさらに日本人が長生きし過ぎるようになったので、子供の学費にまわすお金がなくなっちゃったんです」
「売春防止法は、売春自体を処罰するのではなく、売春の周旋や斡旋する者に対する法律です。そもそも売春をする女性には補導や保護ができますが、男性には警察の強制力は働きません」
「人間って死体を棄てるとかなんか疚しいことをする時は、自分の育った環境と真逆のところを選ぶらしいのよ。海の近くに住んでいる人は海に死体は棄てないし、山に住んでいた人はやっぱり山には棄てないらしいの。それが犯罪者の心理なんだって」