『食堂のおばちゃん』

山口恵以子さんの作品。『恋するハンバーグ』の前の話。『恋するハンバーグ』を読んでから、前のシリーズがあることを知った。

はじめ食堂で働く姑の一子と嫁の二三、常連客との物語である。

『恋するハンバーグ』に出てきた孝蔵と高がすでに亡くなってしまっていたので、驚いた。

一子さんと二三は「にのまえ」という苗字の人と結婚するとは夢にも思わなかっただろう。

二人はとても仲が良く、はじめ食堂に安心して通えると感じた。

フォン・ド・ヴォーは作るのがとても大変そうだと感じた。

印象に残っている文

コロッケはトンカツより軽く見られているが、実は家庭料理の中でももっとも作業工程の多い料理で、ジャガイモを茹でて皮を剥いてつぶす・玉ねぎをみじん切りにしてひき肉と炒める・それをジャガイモと混ぜて中身を作る・形成して衣を付ける・揚げる……と、トンカツの五倍くらい手間が掛かる。

フォン・ド・ヴォーはフランス料理のソースの素になる出汁で、簡単に言えば肉や野菜を炒め、丁寧にアクを取りながら煮詰めたスープである。八リットル近い水分が最終的には一リットルになってしまうのだから、如何に時間と手間の掛かる作業が要求されるか分かるだろう。

「よく聞きなさい。愛情っていうのは無理を強いるものなの。やりたくないこと、嫌なこと、辛いことでも、愛する誰かのためにせざるを得ないのが愛というものなの。当麻があんたのためにやりたくないこと、つまり我慢したことある? ないでしょ。あんたが嫌がっても他の女との付き合いも続けてるんでしょ? それは愛情がないからよ。分かった?」

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