『夏休みの空欄探し』

似鳥鶏さんの作品。

高校2年生のライが、偶然雨音と七輝という姉妹と出会い、クラスメイトのキヨと謎解きを一緒にしていく物語。


ライとキヨがお互いの良い点を無いものねだりする場面が印象に残っている。私自身は、役に立つのかわからないことでもどこかで役立つ場面が来ると考えている。他人の趣味や得意なことを尊重できるような人間になりたい。

暗号作成の動機が今まで読んだ本の中ではあまりないパターンだった。

あとがきでは、男性主人公の一人称をどうするかについて書かれていた。100年後の小説ではどのような表記になっているのか楽しみである。


印象に残っている文

すぐに古くなる芸能だのファッションだのの知識しかない人種。今この場の、高校生という時期にしか通用しない「友達が多い」ことなんて、それこそ長い人生の中では何の役にも立たない。

僕が最も得意なのはクイズやパズル。役に立たない能力だった。料理なら時々披露する機会がある。ピアノでも突然弾く機会があるだろう。だがクイズやパズルの能力というのは、クイズやパズルを自分から解きにいった時しか使えないはずのものだった。

もとより学校の人に外で、つまりプライベートで装具するのは気まずい。私的領域だと思っている部分に侵入された感じと相手の私的領域に侵入してしまった感じ。

なんでも人間の脳は「透過光」と「反射光」を見る時でモードが違い、画面越しの透過光より紙に書かれた反射光を見る時の方が集中するようになっているらしい。

オタクには意地悪な部分が確かにある。本好きの人が『星の王子様』を出されたり、映画好きの人が『ローマの休日』を出されたりすると「あーはいはい」などと余裕の笑みを返したりする、ああいう部分だ。

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