『火喰鳥を喰う』

原浩さんの作品。原浩さんの作品は初めて読む。横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作である。

戦時中に亡くなった大伯父の日記が見つかって、雄司のもとへ届く。ところが、いつの間にか日記の記述が消えたり、雄司の周りの人の行動がおかしくなったりと、不審な出来事が多くなる。


次は日記がどんな記述に変わるのか、誰がおかしくなってしまうのか、と次々にページをめくっていった。

読んでいて背中のゾクゾクが止まらなかった。

貞市の生きる執念を強く感じた。

日記において、戦地で次々と隊員が亡くなっていく記述を読んでいて悲しかった。


印象に残っている文

「おじさん、私の名前わかる?」初対面のおにいさんへ、そのクイズは厳しいんじゃないか。

目は口ほどに物を言うというが、人間は相対する者に対して判断を下す際、相手の目から多くの情報を得るのだということがつくづく感じられる。この写真を見ても、双眸が確認できないという一点だけで、貞市という人間、その人物像に、もやもやとした霞がかかったままだ。久喜貞市という人物は、かつて生きていた人間ではなく、我々にとっては久喜貞市という記号のままなのだ。

「執念ってのは人に何だってさせるんだよ。死んだ人間の日記ですら現実を変える力があるならさ、生きてる人間の執着ってもっと恐ろしいと思わない?」

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