『未婚30』 1 佐平荘具 2024年8月14日 16:21 白岩玄さんの作品。編集者の里奈と作家の佑人は婚約期間中である。しかし、里奈の両親は収入が安定的でない佑人の様子を見て心配している。佑人はおかずを何品も作るという話を聞いて、すごいなと思った。里奈が佑人のことを「おばんざい野郎」と名づけているのが面白いと感じた。多田くんと友達になりたいと思った。男性と女性の両方の視点から結婚について書かれていて非常に興味深かった。「葉子の離婚」では樹の役割がとても重要だったと感じた。印象に残っている文人に言われると意識する。婚約期間中というのは不思議な時間だ。自分が少しずつ既婚者の立場になっていくのを感じる。しかも前よりもちょっとだけ認められているような変な気分。社会というのは思った以上に結婚に対して反応を示すものらしい。メールというのは人の心をわかりやすくするものだなといつも思う。大事な人に対してはすぐ返信するくせに、どこかで相手をなめていると平気で無視してしまう。結婚するというたかがそれだけのことで独身の人間よりもまっとうになったように思えてしまう。マラソンで一緒に走ろうと言っていた相手を裏切ったみたいな気分だった。別に仲の良さは変わらないと思うけど、道が分かれたという意識はある。目鼻立ちがはっきりしていて、造りはいい方なのだが、それを利用する気がないせいで野暮ったいイケメンに留まっているあたりが多田くんのちょっと惜しいところだ。頭のいい美人は自分に向けられる視線がどういう性質のものなのかを実によくわかっている。好意や悪意を他の人よりも多く感じながら生きているのだ。興味を持たれることに慣れているし、生半可な気持ちでは到底付け入る隙もない。「すげー好きになったりとかさ、大事やなって思う人ができたりするとそうならへん? 一人やったはずの自分の世界にもう一人の人が入ってきて、どうあがいても無視できんくなる。そういうのって素敵なことやと思うのよな。身軽ではなくなってしまうけど、その分得るものも大きいっていうか」酒のつまみになるプライベートの話題はもちろんみんなの好物だった。ハトにパンくずをまいたみたいに周りの人があっという間に私の不満を食べていく。「俺、前に人から聞いたんやけど、人生を先の見えへんドライブみたいなもんやとするなら、結婚したい人っていうのは助手席に乗ってほしい人なんやってさ。どんなふうに会話するとか、沈黙があっても平気とか、そういうのも含めてな。ずっと天候がいいわけじゃないし、道路の状態が悪いことだってある。たとえば車が故障したときに、どういう態度でいるとかな。で、俺はそれで言うと、自分が見てないものをちゃんと見てる人の方がいいなーと思ってん。ちょっと道に迷ったときとか、どうしようかなって思ったときに、俺が見えてなかった納得のいく意見をすぱっと言ってくれる人がいいなって」好意を出す量に気をつけながらゲートをくぐる。結婚の一番の喜びは味方ができることなのだ。肉親以外で自分のことを大事にしてくれるのは、なんだかんだ結婚相手しかいない。支えてもらえるとか、共有し合えるとかではなく、自分の存在を根本的に認めてもらえること。ひょっとしたらそれが欲しくて、人は結婚したいと思うのかもしれない。大人になるとは要するに荷物が増えることなのだ。なんの荷物も持たずにいられるうちは子どもだし、一度荷物を持ち始めたら、なんだかんだ二度と子どもには戻れない。 ダウンロード copy いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #白岩玄 #未婚30 1