『宝くじが当たったら』
安藤祐介さんの作品。年末ジャンボで2億円が当たってしまったサラリーマンの物語。
この本を読んで、宝くじは当たらないほうがよいのではないかと思ってしまった。
特に、金を貸してと言ってくる同僚やたかってくる親戚が怖いと思った。
ただ、宝くじに当たっていなかったら修一は千代美と良い結末を迎えていなかっただろう。
宝くじが当たっても絶対誰にも言わないか、全額を寄付するかしてお金のことを変に考えなくする方がいいのではと感じた。
印象に残っている文
ぼくがまず考えたことは、会社を辞めることでも家や車を買うことでもない。
宝くじ当せんおめでとう! たかおめだ。
年収四百万円男の叡智の全てを注いではみたが、二億円というキャンバスに夢を描き切ることなど不可能だった。
「ずいぶん遅かったな。本当に会社辞めちゃったのかと思ったよ。ガハハ」「ぼくは辞めません!」衝動的に大声が出てしまった。「会社が好きだから!」と付け加えれば、あの大ヒットドラマが生んだ名台詞のパロディになるところだ。
わくわく食品の経理課島は普通にメールやエクセルを使えるだけで天才扱いされる、ワンダーアイランド。
秘密というものは不思議だ。外から漏れるとなるとあんなにも恐ろしくて不安なのに、自分から明かしてしまうとこんなにも晴れやかだ。
「修ちゃんは当たったお金をリトマス試験紙にしてるんだ。青が信じられる人、赤が信じられない人、みたいな」
この人となら、変わらないものの温かさと変わってゆくことの面白さを両方とも分かち合える。そんな気がする。