『ぼくたちは大人になる』

佐川光晴さんの作品。

達大は医学部への進学を目指す高校3年生である。ある日クラスメイトの喫煙を告発したが後悔して、死ぬことを覚悟で証拠となるタバコを飲み込んだ。


達大がタバコを20本ほど飲み込んだ場面が自分には絶対にできないと思った。胃洗浄は絶対にしたくないと感じた。

達大と三浦の“寄り合い”はとても楽しそうだと感じた。

自分の受験勉強もある中で、平田さんの生活保護申請を手伝う達大と三浦は偉いなと感じた。


印象に残っている文

後ろからは土屋さんがついてくる。歩く姿を見られていると思うと動きがぎくしゃくして、からだがやたらと左右に揺れる。

もっともぼくは清水先生の偉ぶりたくても偉ぶりようのないところが好きだった。本当は自信がないくせに、教師だからというだけで、一段高い場所から生徒を見下そうとするヤツらに比べればよほどましだ。

「達大は、将来小児科の医者になりたいって言っててさ。それだけの学力はあるし、頑張ってもらいたいと思ってるんだけど、人生は自分で思ってるよりもずっと長いからね。最短距離で目標に到達しちゃうと、反動がでかいんだよなあ。だから、もちろん勉強は本線としてやっていかなくちゃいけないんだけど、それと並行して、小説や詩を読んだり、映画を観たり、音楽を聴いたりさ。落語のテープは、前に貸してやったよな。とにかくそういったものがね、いざ本線が行き詰まったとき助けになってくれるわけさ」

「それは、ぼくもちゃんとわかってるわけじゃないけど、なにかがわかるっていうのは、そのことを他人に伝えられて、初めてわかったことになるんじゃないかって思うんだ」

「そんなことないよ。努力して身につけた自信ななんだから、遠慮しないで、どんどん先をめざして進むといいよ」片岡さんと話していると自然に背中を押されて、それこそ遠慮せずに自分を伸ばそうという気持ちになる。


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