『機械仕掛けの太陽』

知念実希人さんの作品。

2019年から2022年までの時系列で、コロナ禍の医療従事者の視点から物語が進んでいく。

コロナ禍を思い出しながら、本を読んでいた。このとき自分はコロナウイルスについてこう思っていた、このとき自分は何をしていたということを思い出した。

梓が泊まるホテルの支配人が、宿泊料を半額にしてくれた行動が素晴らしいと思った。

長峰の友人の医師である数見の生き方が、かっこいいと思った。

医療従事者の方々は本当に素晴らしい人たちばかりで、尊敬している。

印象に残っている文

ネズミ算式に増えるその物質に満たされていく細胞は、もはや獣の一部ではなく、“それ”を化学合成し続ける、有機工場と化していた。

サイトカインは免疫細胞がウイルスやがん細胞などの異物を認識した際に分泌される生理活性物質で、免疫系を活性化する作用がある。しかし、異物の量が多すぎたり、その病毒性が強すぎる場合、サイトカインによって活性化された免疫細胞自体がさらに大量のサイトカインを分泌し、免疫系が暴走状態になることがある。その状態こそがサイトカインの嵐、サイトカインストームだった。

肺でのガス交換が妨げられ、いくら酸素を投与してもそれを取り込めなくなる間質性肺炎は、まるで陸で溺れるようなものだ。

尿が出なくなるというのは、死が近いことのサインだ。腎臓が尿を作れなくなると、一日程度で息を引き取るケースが多い。

「Happy hypoxia、幸せな低酸素血症。つまり、血中酸素飽和度が大きく下がっているにもかかわらず、本人は息苦しさを感じない状態です。コロナ患者ではよく見られます。」

『ああ、そうだ。俺は最期の最期まで医者でいるって決めたんだ。そして、支えてくれた地域の人たちにできるだけの恩返しをしながら死んでいく。百年に一度の大災害だ。これ以上の奉公はないだろ』

どこの臓器の疾患であろうと、新型コロナウイルスに感染しているというだけで、全て呼吸器内科が担当になってしまう。