『この夏の星を見る』

辻村深月さんの作品。

茨城・東京・長崎の中高生が、コロナ禍でも星を通じて繋がっていく物語である。


コロナのときに感じていた無力感や焦り、怒りを辻村さんが言語化してくれたように感じた。

スターキャッチコンテストがとても面白そうだと感じた。

この子たちはコロナ禍でなかったら、知り合うことがなかったかもしれないと考えると、人との巡り合わせというのは分からないものだと感じた。

個人的に、『家族シアター』で出てきたはるかとうみかが登場していたことが嬉しかった。


印象に残っている文

国と国とが入国制限を行い、皆が家にこもる日々は、これまで誰も経験したことがない未曾有の事態で、つまり、今いる人類の誰もどうしていいのかわかっていない。正解がない中で、さまざまな意見があり、対立もまたある。

“不要不急じゃない”という言葉は、結局、急いでる時に言うの? それとも急いでない時?

なんで女子って、集団でいると、ひとりの時にはやらないような、こういう遠慮のないノリになるんだろう。

「自粛は、自分でコントロールしていいんだよ。本当は、誰かに言われてすることじゃなくて、自分で決めていいの」

本当に知りたい、と思う時に、「まだ早い」と言われる。この世界にその仕組みや理由は確かにあるのに、今の自分では理解できないと言われてしまうこと。亜紗が一番寂しくてがっかりするのは、まさにそこなのだ。

「大人はこの一年を、コロナがどうなるかわからない中で、『様子見』の年にしてしまいたいのかな、と、私はそれも悔しいです。」

何かの分野の第一線で活躍している人に対してよく聞かれる「子どもたちに一言」は、大人がとりあえずする質問だ、という気がする。

自分が何気なく言った言葉を覚えていて、大事にしてくれている人がいる、という事実に、大げさでなく、自分がここにいてよいのだと救われる気持ちになる。

誰も悪くない。コロナのあれこれが始まってから、よく聞く言葉だ。

「実際に失われたものはあったろうし、奪われたものもある。それはわかる。だけど、彼らの時間がまるごと何もなかったかのように言われるのは心外です。子どもだって大人だって、この一年は一度しかない。きちんと、そこに時間も経験もありました」

いいなと思ったら応援しよう!