『ホケツ!』

小野寺史宜さんの作品。

小野寺さんの作品を読むのは、初めてである。

万年補欠のサッカー部員の大地が主人公である。大地の母はすでに亡くなり、伯母の絹子と一緒に暮らしている。ときには家族との関係に悩み、部員の恋愛相談に乗り、他の人のために動く。

伯母さんに自分はレギュラーだと嘘をつく大地の行動に同情した。なかなか自分が補欠だと家族に言いづらい。

大地のような部員が一人でもいると、チームは円滑に機能する。サッカーの上手い下手は関係なく、大地はチームに必要な選手だと思う。

後半に逆転するのではなく、後半残り少しのところで物語が終わるところがとても良いと思った。


印象に残っている文

廊下で会えば、おぅ、と言い合うし、二、三、言葉を交わしたりもする。でも同じサッカー部員であったときの気安さはなくなったように感じる。たぶん、堅も同じだろう。どちらに原因があるということじゃなく、どうしてもそうなってしまうのだ。元部員と部員は。

カレーはいい。何せ失敗がない。炒めた野菜にカレー粉をまぶしても、焼いた豚肉にカレー粉をまぶしても、うまくいく。いや、うまくいってはいないのかもしれないが、大失敗にはならない。

たまにしから会えないというのは、言い換えれば、たまには会えるということだ。会おうと思えば会える、ということでもある。もう会えない、と、会おうと思えば会える。その二つのちがいは大きい。

人と人、どうしたって相性はあるから、部員全員が親友同士になれるはずはない。でも、誰と誰は話さないとか、誰の前では誰と話しづらいとか、そんなふうにはしたくない。できれば何とかしたい。

準備のないところへ簡単な要求を出されると、人は断りきれずに応じてしまう。

そうやって、社会は広くつながってるのだと教える。という理屈。でもそれでぼくらが本当に教わるのは、社会には妙な理屈をつけて人を縛りにかかる者たちがとても多いのだ、ということ。

ポテトは高校生男子のツボをつく。おれポテトきらい、という男子はいない。

こんなとき、初めの十往復二十往復ぐらいは、いつも無言になる。空気を整えるというか、お互いを認め合うための時間だ。部の練習が始まる際のグラウンド三周、みたいなもの。

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