『クジラの彼』

有川ひろさんの作品。以下の作品が収録されている。

クジラの彼、ロールアウト、国防レンアイ、有能な彼女、脱柵エレジー、ファイターパイロットの君

「クジラの彼」は、潜水艦に乗ってしまうためなかなか連絡が取れないカップルの話である。もし自分が彼らの立場だったら、姿を確認できるまでとても心配になると思う。

「ロールアウト」で航空機内のトイレの設計について議論されていたことが印象に残っている。確かに女性からすれば、男性が用を足しているところを通り過ぎるのは嫌だと思う。

「脱柵エレジー」が一番好きな話である。「脱柵」という言葉の響きがいいと感じた。せっかく頑張って抜け出したのに、彼女側が来なかったのが可哀想だと思った。

印象に残っている文

「潜水艦乗りからすると世間の人って二種類に分かれるんだよね。潜水艦が『潜る』って言う人と『沈む』って言う人。素人さんは半々くらいの確率で『沈む』って言いがちなんだけど、君は違うんだなって」

潜水艦の航海スケジュールは丸ごと防衛機密で、出航日も期間も寄港予定も部外秘だ。家族でさえも航海予定は知らされないことが珍しくないそうで、たかが彼女ごときに予定を話せるわけもない。

ストレスは高いところから低いところへ、より弱い者へと下りてくる。

「大丈夫と連呼する人ほど大丈夫じゃない」

いくら美味そうであっても決して食えない絵に描いた餅よりコンビニのみたらしのほうが価値があるのである。

自衛隊駐屯地や基地から隊員が脱走することを隊内用語で脱柵と呼ぶ。

「ママが知ってる中で、一番かわいい空色だったんだってさ」

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