『図書館内乱』
有川ひろさんの作品。
図書館戦争シリーズ2作目。それぞれの登場人物に焦点が当てられていく。
郁の父親が抜き打ちで郁の仕事ぶりをチェックする場面が面白かった。堂上教官はさすがの仕事ぶりだった。
小牧は勝手に彼女がいない印象を持っていたので、毬江と意外な関係があって驚いた。もし近くにいたらいじりがいがあると感じた。
柴崎は人間関係を形成する際にさまざまな工夫を凝らしていてすごいと思った。
「レインツリーの国」がこの作品に登場する本であることを知らなかった。ちょうどいいところで話が終わり、続きが気になるところである。
印象に残っている文
噛みつくように肯定した郁に柴崎は「まあ暇だったらたまには付き合ってあげるわ」とやはりにやにや笑いだ。くそ、不思議の国のアリスにこんな猫が出て来なかったか。
自分より年が若い者の不運を聞くとやるせなくなるのは、人間の本能のようなものだろうか。
突発性難聴は発症二週間以内に治療を開始するのが望ましいとのことで、要するにそれは回復のリミットだった。そのリミットを過ぎてからの治療では回復の可能性が大きく下がり、一ヶ月を過ぎると治療してもほとんど効果はないという。
「嫌いなのよねー、あの年頃の純粋さを盾に取った正義感って。自分の価値観だけで世の中全部量れると思ってるあの無意識な傲慢さとか、悪気なく上から被せてくる押しつけがましい同情心とか。まったく世界に対して自分が一体どれほど重大だと思ってんだか、自意識が肥大しすぎて脂肪肝にでもなれそうな勢いね」
君のせいじゃないとか言われてもそんなものは絶対自分のせいだと思う。君のせいじゃないと言われてあたしのせいじゃないなんて思える女はその男のことが好きじゃないのだ。
人付き合いのコツは周りの誰も信用しないことだと柴崎は本気で思っている。誰かと話すときは基本的に話が漏れることが前提で、漏れる範囲とその範囲に対する相手の影響力を鑑みて開示する情報を斟酌する。そのうえで話を漏らされたときのカウンター材料の用意を常に怠らない。大抵はそのカウンター材料が安全弁になって重要な情報の流出は止まる。