『生命式』

村田沙耶香さんの作品。

「生命式」を読んで、いつかこのような価値観に変わる世界が来る可能性も0ではないと考えた。価値観というのはその時代によって変わっていくので、また新たな考えが世の中に浸透していくかもしれない。

「孵化」がとても印象に残っている。自分のキャラを所属するコミュニティによって、本能で使い分けている主人公がすごいと思った。主人公の言葉に、気づかされたこともあった。

印象に残っている文

「真面目な話さあ。世界ってだな。常識とか、本能とか、倫理とか、確固たるものみたいにみんな言うけどさ。実際には変容していくもんだと思うよ。お前が感じてるみたいにここ最近いきなりの話じゃなくてさ。ずっと昔から、変容し続けてきだんだよ」

「まあまあ、世界はさ、鮮やかな蜃気楼なんだよ。一時の幻。いいじゃんか、今しか見ることのできない幻を、思い切り楽しめば」

「いえ、思いません。だって、正常は発狂の一種でしょう? この世で唯一の、許される発狂を正常と呼ぶんだって、僕は思います」

「私たちは食べ物の信者になることで、奇妙なものでも口に入れているの」

「その人が食べているものは、その人の文化なんですよ。その人だけの個人的な人生体験の結晶なんです。それを他人に強要するのは間違っているんですよ」

「仮面の中に何もないのって、普通のこと? 仮面を被ってる『本当の自分』があるかのように、みんな振る舞ってるじゃない」

「人はね、綺麗なものより汚いものを見たとき、『真実だ』『これこそ本当だ』って騒ぎ立てるの。それで勝手に想像して陳腐なストーリーを造り上げて、自分を納得させて、安心するの」


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