『機長、事件です!』

秋吉理香子さんの作品。

副操縦士の間宮が、国際線デビューとなるフライトでさまざまな事件に巻き込まれていく話である。

アイスクイーンの異名を持つ氷室や、見た目はチャラいが仕事はよくできる幸村と一緒にフランス行きの飛行機で日本を旅立つ。


パイロットの知識がふんだんに書かれており、大変勉強になった。一度試験に合格したらそれで終わりではなく勉強と訓練をしなければならないと聞いて、改めてパイロットの方々の凄さを感じた。

行きのフライトの事件が一番印象に残っている。男性がとても誠実であり、包容力がある人だと感じた。2人には幸せな生活を送ってほしいと思った。

スリやぼったくりに遭う間宮くんが可哀想だとは思うが、なぜだか笑ってしまう自分がいた。

氷室と幸村の関係性に驚いた。今後また二人が乗る飛行機の物語を見てみたい。


印象に残っている文

パイロットの資格試験に合格したあとでも、日々勉強と訓練は欠かせない。副操縦士の場合は一年に一度、機長の場合は半年に一度の定期技能検査を受けることが定められているからだ。審査に合格しなければ、即座に乗務することを禁じられる。

基本的にはパイロット二人体制で乗務するが、長距離を飛ぶ国際線だと、交替要員としてもう一名機長資格を持った者が乗り込み、合計三名となる。

航空会社内では、なぜだか初フライトのことを、「店開き」と言う人が多い。ベテラン機長などでも、その路線に初めて乗務する時に使う用語だ。

V1は離陸決定速度だ。V1に達したら、いかなる不具合が発見されても離陸しなければならない。

パイロットがコクピットに一人になる時には、急な気圧変更に備えて、酸素マスクの着用が義務付けられている。

「同じ女性として断言できるがね、女子は、少しでも男性として意識する人の前では、絶対に眉毛を落とさないし、フェイシャルマスクなんてつけたりしない。」

離陸が魔の三分であるのに対し、着陸は魔の八分と言われている。どんなにベテランのパイロットでも、常に緊張する瞬間なのだ。

海に潜水すると体の中に酸素が溜まり、抜けるのに二十四時間ほどかかる。抜け切る前に気圧の低い場所に行くと、窒素が膨らんで血管を圧迫してしまい、体中に痛みが出たり、皮膚に窒素が浮いて発疹が出たり、呼吸困難になるなど非常に危険だ。それを防ぐために、ダイビングのあと二十四時間は飛行機への搭乗は禁止されているのである。

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