『ヴルスト!ヴルスト!ヴルスト!』

原宏一さんの作品。

主人公の勇人は恋人に言われた言葉をきっかけに、高卒認定を取って大学入学することを目標にする。勇人と同じアパートに住む伸太郎、通称髭太郎はアパート内でヴルスト作りに励んでいた。

2人がドイツに行く場面がとても印象に残っている。生の豚肉というのが美味しそうだった。

途中で伸太郎がいなくなってしまったときはどうなるかと思ったが、見つかって安心した。

加熱しても死滅しないボツリヌス菌には気をつけようと思った。

どの登場人物も最後はハッピーエンドを迎えて、良かった。


印象に残っている文

厨房で働く者にとって一番大切なのは衛生管理だ。とりわけボツリヌス菌や黄色ブドウ球菌は熱に強い菌だから、心して衛生管理に努めろ、と。

ボツリヌス菌は酸素がないところで増殖し、極めて熱に強い芽胞を作る性質がある。しかも、その芽胞に含まれるボツリヌス毒素は青酸カリよりも強い毒性だけに、肉を塩漬けしている間に増殖し、きちんと加熱処理しないまま出荷されたソーセージを食べて中毒する人が続出した。

アメリカのピザも、第二次大戦後、敗戦国イタリアに駐留していたアメリカ兵が本国に帰還してから広まったという。

半身で納入される肉を骨切り包丁でほどよい大きさの肉塊に切り分けたら、それぞれの肉塊を骨すき包丁で丁寧に掃除してやる。掃除というのは、肉塊についている余分な脂や筋、薄皮、血管、軟骨などを取り除く作業で、これがけっこう難しい。肉の特性を覚えて肉の中に埋もれた筋や血管も丁寧に外さなければならないだけに、慣れないと肉も一緒に落としてしまう。

乾燥にも燻煙にも温度と時間に幅があるのは、それぞれ絶対的な基準がないからだ。

「仕組みは人間とおんなじだけんど、もういっこ困んのは、豚ってやつは人間ほどうまく汗をかけねえわけよ。体を冷やすためには水を飲むしかねえから、水ばっか飲んでてますます食が進まなくなる。そうすっと体力もがくんと落ちて病気にかかりやすくなって、最悪、死ぬやつまで出てくる」

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