『心音』

乾ルカさんの作品。

「海外での心臓手術で助かった子ども」が題材の本を読んだことがなかった。

明音は自分自身が選んだわけでもないのに、周りから誹謗中傷をされ本当に可哀想だと感じた。

明音の周りの人が亡くなっていくのも、明音にしてみればとても辛いことだと思う。

明音自身にほとんど悪いところがないにも関わらず、あそこまで非難されていて、周りの人の悪意の怖さを感じた。


印象に残っている文

男は不倫をすると太ると聞いたことがある。女のところで食事をし、なおかつ疑われないよう妻の料理も食べるために。

「楽器とはね、友達になれるの。自分の思うままに奏でられる楽器を一つ持つのは、心をすっかり許せる親友を一人持つことにとてもよく似ている。あなたは友達と好きな曲を弾くの。つまらない話題では話が弾まないでしょう? 好きな曲なら、感情を乗せやすいから、もっと仲良くなれるわ。仲良くなればなるほど、楽器はあなたに応えてくれる。心を奏でてくれるようになるの」

「ずっと補欠だったけど、いい経験をしたとかいうコメントって、あれ絶対無理してるよ。要は、時間の無駄だったって認めたくないだけ。別に、世の中ってそんな大したものじゃない。頑張ればいいことあるとか、報われるとか言う人いるけど、一般的には徒労に終わるの。違うなってわかっても方向転換しないのは、馬鹿だよ」

ごめん、ノート見せて。ごめん、明日返すから。そんな軽い感じの「ごめんね」。「しょうがないなあ」という相手の妥協を促す「ごめんね」。

「私は皆さんの善意で生きている身です」

話が飛んだと思った。本を読んでいたら数ページ落丁していたような感じだった。

生きている。それだけで、人は奏でる。「私は悔いません」これは私だけに与えられた痛みだ。奏でられるのは私しかいないのだ。奏できってみせる。

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