『ラストツアー』

原宏一さんの作品。佳代のキッチンシリーズの最終編である。


佳代は恋愛をしないままかなと思っていたので、再びアランと出会えて良かった。

ある人は亡くなり、ある人は夜逃げして、ある人は反抗期を迎えというように、過去に出会った人物の現在が意外だった。

『ヤッさん』シリーズのミサキのお母さんが出てきた。

ネギ一本と芥子酢味噌で作られる「一文字のぐるぐる」を食べてみたいと思った。


印象に残っている文

「食の記憶って大事だと思うの。だれが、どんな味で寄り添ってくれたか。それって脳がちゃんと覚えているのよね。」

「あたしも一緒。どっちがいいかなんて考えてるより、できることは何でもやる。失敗したらまた別のやり方でやり直せばいいんだから、いまやれることを気合いと度胸でどんどんやっていけば、つぎの何かが見えてくるし」

親ほど面倒臭いものはない。親ほどありがたいものはないとわかっていながら、佳代も子どもの頃から身にしみて体感してきた。愛されているようで舐められてもいる。信頼されているようで疑われてもいる。といって、ないがしろにされているわけでもない。幼少期であれ、思春期であれ、成人後であれ、何歳になろうと子どもは親心という名の保護観察下にあり続けるわけで、それを思うほどにうんざりする。

「親族間の窃盗には“親族相盗例”いうのが刑法に規定されてて、刑を免除されるんやて」

「佳代のキッチンは、ビジネスじゃなくて生き方なんだ」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?