『神去なあなあ日常』
三浦しをんさんの作品。
タイトルから田舎の物語かなと思ったら、そうであった。しかし、林業をテーマにしたお話だとは思わなかった。
林業についての知識が全然なかったが、主人公の勇気がわかりやすく説明してくれて理解することができた。
ヨキの性格がとても好きである。ヨキのような先輩が身近にいたら、とても楽しく過ごせそうだ。
直紀のツンデレ具合も面白かった。
現代の人たちは余裕がなくて、「なあなあ」で生きていくことを忘れているのかもしれない。
人間は自然に生かされているのだということを再確認させてくれた一冊だった。
とにかく、春の勢いはすごい。これまではモノクロにくすんでいた画面に、一瞬で色がつくみたいだ。どんな特撮技術を使っても、この鮮やかな景色の変化は表現できないだろう。
「日本の森林で、人間の手が入っとらん場所なんかないで。木を切り、木を使い、木を植えつづけて、ちゃんと山を手入れする。それが大事なんや。俺たちの仕事や」
尾根に向かって、木を右に切り倒すことを右斧、左に切り倒すことを左斧という。さらに、伐倒する方角は細かく八方位に分けられる。
山は毎日、ちがう顔を見せる。木は一瞬ごとに、成長したり衰えたりする。些細な変化かもしれないが、その些細な部分を見逃したら、絶対にいい木は育てられないし、山を万全の状態に保つこともできない。