『誰かがジョーカーをひく』
宇佐美まことさんの作品。宇佐美さんの作品は初めて読む。
地方都市に住む平凡な主婦の沙代子は車の運転中に、キャバクラ嬢の紫苑と接触事故を起こしてしまう。そこから、犯罪の片棒を担がされることに……。
沙代子の家庭状況を知って、本当にかわいそうだと感じた。美味しい料理を作ってくれることに対して、もっと感謝してほしいと感じた。
陽向の父親が光陽フーヅファクトリーの社長と知った時、物語の展開ががらっと変わったような気がした。
紫苑が過去の父親についで語る場面が、とても印象に残っている。
紫苑も陽向も実はきちんとやるべきことを考えていたのだと知って、驚いた。
印象に残っている文
ぬか床は、毎日掻き混ぜてやらないとカビや腐敗が進む。そんなことをしてくれる人は、川田家にはいない。大事に育ててきたぬか床がダメになってしまう。こんな事態に陥って、ぬか漬けの心配をする自分がおかしかった。
化粧を落とした寝起きのキャバクラ嬢は、日の光の下で見ると目も当てられなかった。瞼は腫れあがり、髪の毛は脂気がなくバサバサだ。肌も荒れている。
一定のレベルにまで体を作り上げた者が向かうのは、精神世界だ。最後は自分をどうコントロールするかだ。気持ちを落ち着け、集中し、どこまでも自分と向き合うことが肝要だ。無の境地に入り込むのだ。
「な? 悪いことはいつまでも続かんもんよ。ぐるぐる回って何もかもええようになるけんね」
「竣、ジョーカーをひいたのは、あんただ」
「ハルジオンはね、つぼみの時はうつむいてるけど、咲いたらずっと首を伸ばして太陽の方を向くの」