『恋するハンバーグ』

山口恵以子さんの作品。佃のはじめ食堂に関する物語。


どの登場人物も魅力があって、食堂の中の雰囲気が楽しそうだと感じた。特に亮介が努力家でとても応援したくなると感じた。

古き良き時代の定食屋で、食事だけでなく心も満足できるお店だと感じた。

孝蔵さんは料理人としてだけでなく、後進を育て上げるという能力も一流だと感じた。

孝蔵のコンソメスープはぜひ飲んでみたいと感じた。


印象に残っている文

料理人は毎日同じ料理を同じ味で作れなくてはいけないが、変った料理を作りたい気持ちも強いのだ。

この時代、ビフテキというのはご馳走の代名詞であり、レストランでビフテキを注文するというのはそれなりの覚悟が必要だった。

「俺は料理に限らず、一人前の職人になるって言うのは、豆腐屋へ豆腐を買いに行くようなもんだと思ってる」「……お豆腐?」「ああ。豆腐買うのに五百円札や千円札は要らない。かえって迷惑なこともある。十円玉二つ三つ握ってりゃ、それで十分だ。ところが簡単なようでいて、これがなかなか難しいのさ」

純喫茶というのはアルコール類の販売をしない喫茶店を言う。

「お二人は若いから、目標が沢山あるでしょう? 全部達成できなくても、四捨五入して一つ上に上れば、成功ですよ」

コンソメスープは材料費も手間暇も掛かるのに高値を付けられない、まことに割に合わないメニューだった。

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