『腹を割ったら血が出るだけさ』

住野よるさんの作品。

高校生の茜寧は、愛読書の登場人物の「あい」に似ている人を見つける。

アイドルの樹里亜は徹底して自分のストーリーを作って、それを実行していてすごいと思った。華々しい舞台で輝いている裏では、相当な努力を積んでいるというのがよく分かった。

茜寧は周りの人に対して、「作った自分」を演じていた。本当の自分がわからなくなるというのは、思春期特有の現象だと感じる。

「この物語は自分にまさしく当てはまる」ということが起こりうると思っている。最後の言葉がとても素敵だと感じた。


印象に残っている文

朝焼けがどこかに逃げ出そうとしているような空だった。

表向きは、純粋さとすれた感覚を絶妙な塩梅で待ち合わせる女子高生の歩幅をただ作った。

茜寧はこういった類の質問には理解が深かった。相手が大切にしているものを脅かさないよう、言葉の端で相手の感性を褒め、自分自身が抱いた感想は多少の変化球にする。

完璧な八方美人は危険だ。評価が裏返る可能性がある。誰かしらを贔屓する態度を明確に示さなければならない。

確信とは、よくて八割から九割の状況判断と一割から二割の信仰に過ぎない。

努力を自ら披露するのが似合う者と似合わない者がいる、と樹里亜は考える。

「どうかこの物語が、あなただけのものでありますように」

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