『僕の女を探しているんだ』

井上荒野さんの作品。以下の話が収録されている。

今まで聞いたことがないピアノの音、あるいは羊

亡き人が注文したテント

静かな、もの悲しい、美しい曲

ポメラニアン探し

大人へのボート、あるいはお城

真木とマキ、あるいはきっと辿り着ける場所

偽物の暖炉の本物の炎

塔、あるいはあたらしい筋肉

今まで着たことがないコート、あるいは羊


「愛の不時着」のオマージュだとは知らなかった。

「ポメラニアン探し」「大人へのボート、あるいはお城」「塔、あるいはあたらしい筋肉」

が特に面白かった。

「愛の不時着」を観てから、もう一度読んでみようと思う。


印象に残っている文

もう少し大きくなったら。その言葉があたしはきらいだった。小さいときから、何かできないこと、するのを禁止されることがあるたび、「もう少し大きくなったら」と言われてきたからだ。

「ここに羊が一匹いるんだ、まだ小さい羊だけど」あたしの胸の辺りを指差してジョンは言った。「その羊が怒ってる。そんな気がしない?」

リーはあいかわらず正体不明で、ガラスの瓶の中に入っているようだったけれど、そのガラスはキラキラ美しくて、そばにいると僕は、もうひとつの太陽に照らされているみたいな心地になった。

「処置」という言葉は私の口から硬い石みたいに床に落ちた。

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