『法廷遊戯』

五十嵐律人さんの作品。

法都大ロースクールに所属する清義は、自分がいた児童養護施設長の胸元にナイフを刺したことがある。ある日幼馴染の美鈴が、ロースクールの同級生の馨を殺した罪で被疑者となる。清義は美鈴の弁護を担当することに。


無辜ゲームのルールが非常に興味深かった。

奈倉先生が冤罪と無罪の違いについて考えさせる場面が、印象に残っている。

清義と美鈴が痴漢冤罪を仕掛けた相手が分かったとき、鳥肌が立った。

馨の行動の意味に衝撃を受けた。

法律に詳しくない人はこの話を思いつかないだろうと感じた。


印象に残っている文

「ゴリラとヒグマが喧嘩をしたら、どっちが勝つと思う?」中略「人間からしたら、ゴリラもヒグマも敵わない相手で一括りにするって話。どっちが強いかなんて、学者か数学マニアじゃない限り、調べようともしない。分かるか? 同じレベルに立たないと、細かい違いは実感できないんだよ」

鎖鑰ーー鍵及び錠ーーを開いて住居侵入を試みる相手に対しては、自己に差し迫った危険を排除するために殺傷行為を加えても、防衛行為と推定されて違法性阻却事由になり得る。

「勘違い? 復讐を容認する考え方が同害報復なんだと思ってたけど」「いや、真逆だよ。同害報復は、寛容の論理なんだから」

捜査情報が圧倒的に不足している弁護人にとって、証拠開示は生命線となる制度だ。通常の事件では、検察官が取調請求をした証拠と任意開示された証拠しか弁護人は開示を受けられないが、公判前整理手続に付された事件においては、検察官が保有しているに留まる証拠も開示を求めることができる。それが、類型証拠開示請求である。

手渡された爆発寸前の爆弾を、ドライバー一本で解体しろと命じられる。無罪主張をする弁護人に求められるのは、そんな作業だと僕は考えている。困難な作業に立ち向かうスタッフは自分で探さなければならず、解体に手間取れば木端微塵に爆発してしまう。無傷で解体に成功する確率は、限りなくゼロに近い。

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