『戯作・誕生殺人事件』
辻真先さんの作品。辻真先さんの作品は初めて読む。
東京から北関東へ移住したキリコ夫妻は、高齢出産を決意する。しかし、移住先でも殺人事件に巻き込まれてしまう。
スーパーとポテトというように、あだ名で呼び合う関係がいいと思った。
作中に他の作者の作品などがセリフで出てきて、とても面白いと感じた。
絶対に分からないであろう質問に美祢があっさり答える場面が面白かった。
最後の「牧ナントカちゃん、お誕生おめでとう!」のページが、遊び心があって良いと感じた。
印象に残っている文
「ま、そこはスーパーだからね」本人より先に亭主が自慢するところが、この夫婦らしい。
大衆に提供するなら、清く正しい品性を保つ内容を。高潔なヒューマニズムを。そこまでゆかずとも、美しい恋のドラマを、心地よい人情話を書いてこそ、読者の情操に資することができる。そう確信する読者にとっては、トリックだのアリバイだのに血道をあげて、みすみす人が謀殺される物語なぞ、醜悪としか解釈できまい。
テレビがはじまり団地が増えマイカーが普及してこのかた、日本人は大人も子供も中流階級の顔の持ち主ばかりになった。
ふと気付くと、中庭では虫たちの名残りのコンサートが開かれていた。最盛期を思えば物寂しい楽団員だけれど、耳をすませば玄関越しに前庭からもほそぼそと演奏が流れてくる。