『たったひとり』
乾ルカさんの作品。
大学の廃墟探索サークルが27年前に土砂崩れで崩壊したラブホテルを訪れる。
ホテルに入ると全員昏倒してしまい、気づいたときには27年前の土砂災害が起こる時刻の30分前だった。
お互いのメンバーに対する駆け引きのようなものが、とても面白かった。
午前0時を待つ間のそれぞれの心理描写が面白く、とても惹き込まれた。
誰にとっても救われない結末で、久しぶりにこんなに後味が悪い本を読んだと思った。
印象に残っている文
人は社会の中で成長するにつれ、程度の差こそあれど仮面をかぶって生きるようになるものだ。だが、平穏から放り出されたとき、それはあえなく溶け落ちる。
謝罪が目的ではない、取るに足りないメンバーにも、場合によっては非を認め謝ることができる、理想的なリーダーだという証明行動なのだ。
時は悲しみを消しはしないが、悲しみとともに生きることに慣れさせてはくれる。