『ばにらさま』

山本文緒さんの作品。

ばにらさま、わたしは大丈夫、菓子宛、バヨリン心中、20×20、子供おばさん、の6つの話が収録されている。


「ばにらさま」では、恋愛の中に少しでも打算が入るとうまくいかないと感じた。

「菓子宛」では、舞子と胡桃の関係性が明らかになった時にとても驚いた。

「バヨリン心中」では将来の日本で起こりそうなことが書かれていて面白かった。


印象に残っている文

この界隈で働く女性は、大雑把にふたつに分けられることが分かった。僕の女上司のように細いパンツスーツを着るグループと熱帯魚のようにひらひらオフィスを行き来するグループ。パンツスーツはゆうゆうと一匹で泳ぎ、熱帯魚は群れている。群れているのは正社員ではなく派遣で働く子がほとんどだった。

私はずっと結婚しないだろうな。三十歳になったときにそうぼんやりと思った。結婚なんかしない、ではなく、結婚という一人の異性に振り回される関係を維持しつづけることはとてもできないと思った。

大人はみんな知っている。人生のパートナーはこの世で一人きりではないことを。賃貸マンションのように、条件さえ緩めれば、好きになれる相手はいくらでも存在する。問題は親密さを保つ努力や、相手のことを慮る想像力だ。それに加えてひと匙の縁。

それまでは、年齢という階段を上がってゆくとテレビドラマのように何かエピソードが自然に展開してゆくのかと思っていました。

人と人との関係は時にそれが同姓同士でも仕事の関係でも蜜月を迎えることがある。そしてそれはまず例外なく、熟して落ちる果実のように自然に終わるものだ。

七年も会っていなかった人間は、ものすごく冷たいようだが三年着なかったジャケットみたいだ。

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