『だれのものでもない悲しみ』
辻原登さんの作品。辻原さんの作品を読むのは初めてだ。
爆弾事件で偶然出会った二人の男女。この二人は過去に何回か関わりを持ったことがある。
あっという間に読んでしまった。男の女に対する声掛けがとても良かった。ラストは生死が明らかにならないものだった。できれば2人には生きていてほしい。
印象に残っている文
いつも蕎麦をすするとき、目のやりばにこまる。必ず蕎麦か汁が目に入る。それがいやだ。目をつむって食べるわけにもゆかず、ただぼんやりとほとんど視線を殺した状態で食べる。
「そうかなあ。糸って、みえないだけなんじゃないかなあ。いつかそれが両端でぴくっとふるえて、そのふるえで、遠くかけ離れていた男と女が愛にめざめる」
「わたし、できたらしいの」この世と小説の中で何億回となく繰り返されてきたお決まりの文句。
殺したいとおもうのと殺すことを考えるのとは違う。殺すことを考えるとは、ひたすら考えを殺す方法に集中することだ。