『君のいた日々』

藤野千夜さんの作品。

妻を不治の病で亡くした夫。夫が亡くなってしまった妻。


両方の世界が描かれていて、とても面白かった。

タワーリング・インフェルノの挿入歌「愛のテーマ」が作中に出てきた。今度聞いてみたい。

お互いにとって辛いことだと思うが、生前はとても良い夫婦だったことがよくわかった。

照明が点滅する場面は自分だったら泣いてしまうだろう。息子も母の死に涙を流したと聞いて、良い息子だと思った。


印象に残っている文

「姉さん。……なんでそういう意地悪な言い方するかな」「なによ、その山田太一のドラマみたいな喋り方」

ふたりきりで世界が完結している空間は、なにを話しても面白かった。

世の中には日々、運良くすり抜けていることがたくさんあって、勝手にセーフと信じていると、突然、アウトを突きつけられて狼狽する。

「ねえ、にし君。なんでこんなにさびしいのかなあ」「それはさあ、幸せだったからじゃないの?」

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