『不惑のスクラム』
安藤祐介さんの作品。
痴漢の冤罪に絡んで、人を死なせてしまった丸川。出所したあとに死に場所を探していると、河原で中年ラグビーチームのヤンチャーズと出会う。代表の宇多津は丸川をチームに誘う。
視点人物が変わって、それぞれの人生について知っていく形式がとても良かった。
丸川はヤンチャーズと出会って、本当に良かったと思う。特にラストはかなりグッときた。
ラグビーの試合後のエール交換がとても面白そうだと感じた。
ヤンチャーズの人たちは面白い人ばかりで、楽しそうだ。
印象に残っている文
フルバックはゴールの番人。自陣の最後方で敵の突進を食い止める、最後の砦だ。
声を掛け、名を呼び、自分の位置や敵の動きを知らせ合わなければチームは機能しない。故に、ラグビーでの“声”は士気を鼓舞するとかチームプレーを円滑にするといった次元を超え、ひとつの生命線でもある。
「正直に言っていいでしょうか」城井の口癖。上司に盾突く時の枕詞だ。
宇多津貞夫、六十九歳。端数の人生を、力一杯生き切った。
会社の宴会でも友人同士の会食でも、しばしば皿に最後のひとつが残る。誰も得をしない、無駄な遠慮だ。
おっさんが一列に並んで壁に向かって一物を出しているあの光景ほど間抜けなものはない。代わる代わる差し出されるおっさんの一物を年中眺めている小便器くんは、さぞ憂鬱だろうと。