『定年待合室』

江波戸哲夫さんの作品。暇な部署に異動させられ、妻の病気もあり早期退職をした大和田。ある日、行きつけのバーのマダムに頼まれてマンション販売や営業先のトラブル解決をすることに。


閑職に回されるというのは、どのような気持ちになるのか。「こんな仕事やってられない」というようになるのだろう。

人とのつながりというのは、いつまでも持ち続けていないと人間らしく過ごせない、人は一人では生きていきにくいということを学んだ。

バーのママのコミュニケーション能力が高く、とても魅力的な人だと感じた。


印象に残っている文

「そもそもお客のクレームっていうのは、敵は本能寺にありですからな」それは大和田も思い知らされている。たいていは文句をつけていることと違うところに、客の本当の不満がある。

「そんなことはないんです。息子にとって母親は永遠に母親です、いつだって自分の幸せの原点にいるのです、息子は、母親を幸せにしたいと思いながら大人になるのです」

「店長が普通に店を把握しているときは、店内に生き生きした空気が漲っているものです。それが少しも感じられなかった。もし店長がダメでも、誰か一人まともなプレーヤーがいれば、空気はどこか活性化するんですが、それもありませんでした」

「ゆっくりでいいですよ。マンション販売は、売れるまで止まることのできない長距離レースですから。自分のペースにあわせてやらないと息が切れてしまう」

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