『ミルクとコロナ』
白岩玄さんと山崎ナオコーラさんの作品。
育児についての交換エッセイが書かれている。
世の中の母親や父親に対する見方をお二方が的確に言語化していて、とても興味深かった。
「もし出産を男性もできるようになったら、出産を快く引き受ける人は少ないのではないか」という白岩さんの意見に共感した。
お二方が自分の職業を子どもにどのように伝えるかについては、とても勉強になった。
印象に残っている文
母親になった女性を尊敬して白旗をあげるのは、一見、女性を持ち上げているようで、育児を女の人任せにしてしまいかねない。
謝らせるために「責任」という言葉を使うのではなくて、他人と手を繋ぐために「責任」という言葉が使えたらいいなあ、と考えた。
決して、「女性は嫌だ、男性になりたい」なんて思っていない。そうではなくて、「性別にかかわらず、すべての人間に憧れていい」という社会を私は希望しているのだ。
今の日本社会には、自分自身のために他の存在を押しのけたり、無理やりにでも自分が前に出ようとしたりするのははしたないことだとされているのに、愛する存在のためにそれをするのはむしろかっこいいことだとする視線がある気がする。
以前の社会には、「自分の人生には仕事しかない」という顔をしなければ職業人として認められない雰囲気があった。育児が大変な時期でもそれを周囲に感じさせないよう配慮し、「育児をしていない人とまったく同じ形で働けます」と言うのがマナーだったように思う。
ぼくの場合は、父親の一人としてメディアで発言を求められたことがこれまでに何度かあるのだが、そのときに感じたのは、父親は育児のことを話す際に成績表を提出しなければならないんだなということだった。要は、あなたはどれくらい家事や育児をしていますか、ということを、まず第一に訊かれることが多いのだ。