『穢れ舌』

原宏一さんの作品。『星をつける女』の続編である。


今作では、犯罪を暴くことが多かった気がする。特に「すし海将」については、紗英たちがかなり危険な目に遭っていたので、読んでいてとても心配になった。

「ユウコの厨房」を読んで、メディアや仕掛け人が作り上げた流行に気をつけなければならないと感じた。

紗英の娘の杏南が作るフランス料理がとても美味しそうだった。


印象に残っている文

商業登記簿とは会社の基本的な情報を記載した台帳のことで、だれでも自由に閲覧できる。なぜこの制度があるかといえば、未知の会社と取り引きする際、不測の損害を被らないようにするためだ。

「ただね、私は思うの。減るもんじゃあるまいし、って絶対に違うと思うのね。減るのよ。心がすり減るのよ」

「そりゃそうだよ、そもそも酒ってのは、蔵元、問屋、小売店、消費者の順に流通するように法律で決められている。なのに、いまどきはその中間に地酒ブローカーが入り込んで、正規の特約店から人気銘柄をごっそり買い占めて別の小売店に高値で転売しちまうんだな。その結果、ネットはもちろん、一般の酒屋やスーパーにもプレミア価格の日本酒が出回って、消費者もそれが当たり前だと思い込んじまっている」

「ただ星をつけるだけの人がいなくなったら、だれが星をつけるんですか」

鮨屋の善し悪しは、まず店内の匂いでわかる。かつて久志さんからそう教わった。魚臭い店は、魚の品質だけでなく衛生管理も悪い。煙草臭い店や整髪料を香らせた職人がいる店は、味へのこだわりがまるでない。店内の匂いを嗅いで、おや? と思ったら即刻退散すべし、と言われた覚えがある。


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