『いつかの人質』

芦沢央さんの作品。

過去に遊園地で誘拐された経験のある愛子は、友達とライブを見に行った際に誘拐されてしまう。

一方で漫画家の礼遠は、妻の優奈が失踪してしまい探していた。


全盲の人が介助なしでLIVEに参加するというのは、思っていた以上に難しいことだと感じた。

愛子が亡くなった祖父のために嫌いなミニトマトを食べる場面が、印象に残っている。

逆転の発想に驚いた。

愛子はこれから幸せな生活を送ってほしいと思う。


印象に残っている文

内臓の表面を粗いやすりで撫でられたような感覚を覚え、陽介は慌てて席を立つ。

愛子は自分が目が見えないことで「かわいそう」と言われることが不思議でならないようで、「そりゃあ目が見えたらもっと読める本も増えるのかなとは思うけど、私は私で幸せなのに」と首を傾げている。

誘拐を成功させたいのなら、何よりもまずスピードが重要になってくる。誘拐事件が発生してすぐ、警察に通報するときにはもう交渉が終わっており、配備が終わっていないうちに受け渡し現場へ向かうのが、本当のところ一番困る展開なのだ。

「それに、たとえば喫茶店とかでいきなり隣の席の人に話しかけられたらぎょっとするし嫌だけど、喫煙所って何かもっとほんわかした空気があるじゃないですか。ライターを貸してもらったり、こうやって貰い煙草するのとかもあんまり抵抗がないっていうか。喫茶店でそのケーキひと口分けてとか言われたらあり得ないのに」


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