『人間の尊厳と八〇〇メートル』

人間の尊厳と八〇〇メートル
北欧ニ題
特別警戒態勢
完全犯罪あるいは善人の見えない牙
蜜月旅行

深水黎一郎さんの作品。
「人間の尊厳と八〇〇メートル」は、バーで偶然出会った男に「八〇〇メートル走をしないか」と言われる話である。人間の尊厳について語る男の論理に納得してしまった。主人公が義足であることは全く見抜けなかった。
「北欧二題」は、旅行で訪れた地で起きたほんの小さな謎について解き明かしていくお話だ。
「特別警戒態勢」は、実際にこのような事件が起こりそうで、本当に怖いなと思った。テクノロジーが発達するのは大変ありがたいが、それを悪用する方法も数多く生み出されるのだと思った。

印象に残っている文

「八〇〇メートルというのは、人間が無酸素運動で走れる限界ぎりぎりの距離だ。」

旅の終わりはいつも妥協の産物だ。

「都合が悪くなるとすぐに男はって言い出すの、卑怯だと思う」

男が若い頃の貧乏について語るのは、いわば一種の自慢である。

「旅行そのものは非日常なんだけど、人は旅行をすると、何故か普段つけているよそ行きの仮面が取れて、本性剥き出しになることが多いから、普段気前の良い人が実はものすごくケチだったり、普段明るく元気な人が、実はとんでもないマイナス思考の持ち主だったり」


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