『ただいまラボ』

片川優子さんの作品。

片川さんの作品は初めて読む。

獣医学科の研究室に所属する学生の物語。


クローン発生するギンブナがいるということを初めて知った。

新倉のグループメンバーの様子を見て、新倉はよく頑張ってまとめたなと思っていたが、なかなか現実は厳しいものだと感じた。

ミカの話すDNAとRNAの説明が、とてもわかりやすいと感じた。

太一はミカと付き合った方がいいのではと感じていた。


印象に残っている文

スーパーでパック詰めされて売られているような肉に比べると、野生に生まれ野生に生きたシカの肉は、段違いに臭い。

「前略 DNAは生体を作るすべての遺伝情報が詰まってるじゃない? RNAは、DNAからタンパク質を作るときにできる一時的なコピーでしょ。DNAは相補的な二本鎖の構造をとってるけど、RNAは一本鎖で、生体内でもすぐに分解されちゃうから、不安定で抽出も気を遣わなきゃいけない。刺激によって発現レベルが上下するから、リアルタイムPCRで半定量的に発現を見たりするよね」

「なあ知ってっか? 人は一生のうち、最低三回は動物園に来るらしい」中略「ミカが動物園実習行って聞いたんだと。一回目は遠足、二回目はデート、三回目は子供と一緒に、らしい」

人間の体内時計は二十五時間周期のため、理論上、一ヵ月のうち一日は、どうしたって朝から晩まで眠い日があるらしい。

動物病院の雇用態勢はあまり整っていない。人間相手の医者のようにしっかりとしたシステムがあるわけではないし、大学病院のような施設の整った大きな病院はまだ少なく、個人経営の小さな病院がほとんどだ。

やっと口を開いたオカメちゃんは、鳥がちまちまエサをつついているんじゃないんだからしっかりしゃべりなさい、と説教したくなるくらいスローなしゃべり方だった。

「自分一人で考えて、調べて解決するのももちろん大事だけど、人に頼るのも同じくらい大事だったりするんだよな」

それもそのはずだ、獣医学科の卒業生自体、全国合わせても年間千人ちょっとしかいないのだから。獣医学が学べる大学は全国でたったの十六校、うち私立はたったの五校。その割には人気が高く、入学試験の倍率が二十倍近いことも、もちろんあまり知られていない。

嫌いになったわけじゃないけど、なんて、全くもって言う必要のないことを、わざわざ別れ際に平然と口に出す女ってやつの心情が理解不能だ。相手のことを思うなら、あんたなんて嫌いだ、その一言で十分じゃないか。相手を気遣ったつもりなのかもしれないが、ただ未練を残すだけで、かえって残酷だろう。

「えっとね、DNAはたとえて言うなら、体で必要なタンパク質の作り方が全部載ってるレシピ本みたいなものだよね。でもDNAっていう分厚いレシピ本の中には、生物にとっては絶対に必要なレシピが書いてあるページもあるし、不必要な情報しか書いてないページもたくさんある。レシピ本は普段は閉じられて読めないんだけど、体がタンパク質、まあここでいうと料理が必要になったときには、そのレシピ本を開くわけ」 中略 「でも、レシピ本にはものすごい膨大なレシピが書かれているから、分厚くて重たいの。だから、料理するときは、必要なレシピだけをいったんコピーする。その一時的なコピーがRNA。そのコピーしたレシピをもとに料理を作るんだけど、いつまでもそのコピーがあると、どの料理を作り終わったのか、次どの料理を作ればいいのか、ごちゃごちゃになって分からなくなっちゃうでしょ? だから、料理が完成されてレシピがいらなくなったら、そのコピーはすぐに捨てちゃう。つまりRNAはすぐに分解されてなくなっちゃうんだ。だから、RNAを取ってくるのにすごく気を遣うんだけど」


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