『屋根をかける人』
門井慶喜さんの作品。
英語教師をクビになった宣教師のメレルが、建築で活躍していく物語。
メレルの家でゲームをするのがとても楽しそうだと感じた。
外国人が日本で現場監督をするというのが大変そうだが、メレルは未経験にも関わらず見事な仕事ぶりだと思った。
メレルと広岡浅子に繋がりがあったとは、知らなかった。
昭和天皇とメレルか対面した場面がとても印象に残っている。
印象に残っている文
「飲酒、喫煙はよしなさい」中略「この家ではもちろん、自宅でも街中でも、駅のプラットホームでも、もちろん学校内でもしてはなりません。私もしません。国法で禁じられているかというより、自分自身を大事にしてほしいのです。わざわざお金を払って健康をそこない、時間を浪費し、その上さらに人間ひとりひとりに備わっている生のエネルギーを失うにはおよびません。自涜も」
英語というのはこういうとき便利なものだと悦蔵は思った。日本語のように敬語や婉曲表現の風呂敷でやんわりとつつむ必要がない。ぴしゃぴしゃと理づめの槍が突き通せる。
合名会社とは、営利を目的とする法人のうち、無限責任を負う社員のみによって構成されるもの。いわゆる家族経営、同族経営の色の濃い企業形態であり、大企業にはなり得ないが、そのぶん外部の人間にあれこれ口出しされることはない。
どうやら仕事というのはポーカーの手札に似て、来ないときは来ないが、来るときはどっと来るもののようだった。
「ちがいます」「え?」「橋ではありません」胸をそらし、その胸に手をあてて、「建築家ですから。私は、双方に、大きな屋根をかけたのです」