『働く女子に明日は来る!』

中澤日菜子さんの作品。

ブラックなテレビ局の下請け製作会社に勤める七菜。理不尽で残酷なことが続き、心が折れそうになってしまう。ある日、七菜は仕事で大きなミスをしてしまう。


頼子の作るロケ飯をぜひ食べてみたいと思った。特に『洋風鍋焼きスパゲティ』を食べてみたい。

原作者というのは立場が弱いというイメージがあったので、意外だった。

NG猛者という言葉を初めて知った。

頼子は理想の上司だと感じた。

すぐに別の撮影場所を見つけてきた李生は、仕事のできる人だと思った。


印象に残っている文

七菜はこの瞬間が大好きだ。二次元のシナリオが三次元に変わる瞬間。紙に書かれたせりふが、ひとの声と動き、表情によって、生きいきと立ち上がる瞬間。その一瞬いっしゅんを作り上げるために、チーム全員がひとつになる瞬間。

ドラマの企画を立て、それが通った時点で、企画者はプロデューサーとしてそのドラマの責任者となる。

ドラマや映画において、原作者は絶対的な存在だ。原作者が首を縦に振らない限り、どんな案件も進行しない。よしんば一度は通った企画でも、万が一原作者に機嫌を損ねられたら、すべてひっくり返る可能性すらあり得る。苦労に苦労を重ねて撮ったシーンがまるごと消えるなんて日常茶飯事だ。

対して「ガヤ」と呼ばれるその他大勢にも、エキストラ慣れしているひとから今回が初めてというど素人まで、いろいろな人間が交じっている。高いひとで一日拘束して日給七千円、いちばん安いランクだと三千円。

だめだ。このままではふたり、世界が終わるまでお辞儀し合うに違いない。

「……無理だとか、簡単に言うな。できない理由なんて探しだしても意味がねえ。まず動くんだよ、前だけを見て。やれることをやれ。目の前の仕事に全力で取り組め。そうしているうちにーー動かねえと思ってたもんが動きだしたりするもんなんだ」

「スパイスは炒めたほうが香りが立つの。チリだけじゃなく、カレーや麻婆豆腐なんかも炒めてから使うといいわよ」

「仕事って時には理不尽で残酷で、こころが折れそうになることってたくさんあるよね。でもね、そんなときこそ『どんな辛いときでも必ず明日は来る』っていう前向きな気持ちが大事なんじゃないかなあ」「……『どんな辛いときでも必ず明日は来る』」「そう。その気持ちを忘れないで。あとは食べること、眠ること、そして少しでも動くこと。この三つができていれば、人間、大概はだいじょうぶ。よく覚えておいて」

よかった。拓ちゃんと会える。からだの奥深いところで灯った灯が、瞬く間に全身を明るく照らし上げる。


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