『縁切り上等! 離婚弁護士松岡紬の事件ファイル』

新川帆立さんの作品。

夫のモラハラと浮気に耐えられなくなり、息子の翔と家を出た妻の聡美。やがて縁切寺の娘で離婚専門の弁護士の松岡紬と出会う。


DVの自覚がない鷹田の行動に、恐怖を覚えた。

夫の定年退職を待たずに離婚をしたい花枝の意図が掴めなかったが、理由を知ってなるほどと感じた。

同性婚の離婚というのが、とても難しいことだと初めて知った。


印象に残っている文

今日の夕飯はカレーライスなんですよ、というような何気ない口調だった。

「パートナーの浮気に気づいたとき、すぐに問い詰めない。これ、離婚を有利に進めるための鉄則だよ。つらいだろうけど、ぐっとこらえて、相手を泳がせたほうがいい。あなたもよく耐えたね」

まっすぐ向けられた目には、初夏の海のようにゆったりと暖かくて、明るくて、それでいて何か楽しいことが始まるかのような期待感が浮かんでいる。

男性の依頼人の多くは、女性弁護士とどう接していいか分からないのだ。自分の恥となるような部分を赤の他人の女性に見られるのは恥ずかしい。女性を「先生」として敬い、その「先生」から指図されるのも居心地が悪い。相手が若い女性ならなおさらだ。

何度も捕まっている店でまた万引きをするのはおかしい気もする。だがそれは、万引きをしない一般人の考えだ。半ば依存症に陥っている者は冷静な判断ができない。むしろ以前万引きをした店に入ると、スイッチが入ったように再び万引きをしたくなることもある。

「退職前の離婚ですと、退職金が財産分与の対象にならないことがあります。あと一年、退職まで待ったほうが手堅いです。財産分与の相場は二分の一ですから、もらえる額に一千万円ほどの違いが出ます」

「いないけど」と答えて、ふと、「いないけど」の「けど」は何なのだろうと思う。いや本当に、けど、って何だ。いないけど、欲しい? いないけど、幸せです? ただ「いない」というだけなのに、何か言い訳を付け加えなければならない雰囲気だ。

つくづく結婚は変な制度だ。惚れた腫れたで付きあって結婚するのに、別れるときには子供とお金の話ばかり。性愛とお金と子育て。別々の話を結婚っていう一つのパッケージでまとめてしまうから、訳の分からないことになるのだ。

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