『そのときは彼によろしく』 1 佐平荘具 2022年11月10日 18:51 市川拓司さんの作品。中学生のとき仲が良かった智史と花梨と裕司。それぞれに事情があり、三人は離れ離れになる。今はアクアプラントショップの店長になった智史。アクアプラントショップのアルバイトの面接に来た森川鈴音。鈴音が現れたことで、物語は大きく動いていく。智史の父親の言葉はとても温かく、心に刺さる内容だった。タイトルの言葉が出てきたときに、とても納得した。読んでいて、心が洗われるように感じた。印象に残っている文初めは出身校という絆にすがっていた彼らも、やがては自分に見合う友人を見つけ、教室という小さな社会の中の位階制を形作っていく。「そうじゃないよ。『トラッシュ』っていうのはねえ、美しいものに付ける名前なんだよ」『世界にはぼくらが知っていることの100万倍もの知らないことがあるんだって』『うそ!知らなかった』『ほらね』「涙は心の表現だ。内なる感情の等値概念だ」彼の気遣いは嬉しかったが、それはたとえば、九九ができなくて居残りさせられている生徒に、クリアした連中が帰り支度しながら「うん、7の段がきびしいのは確かだよね」と声をかけるのと同じで、実のところ、あまり慰めにはなっていなかった。「いつでも、ぼくのことを過大評価しすぎるんだ」「そういうひとがいてくれるのって、幸せなことじゃない?」 ダウンロード copy #市川拓司 #そのときは彼によろしく 1 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート