『私が結婚をしない本当の理由』

志駕晃さんの作品。志駕さんの作品は初めて読む。

スマイル結婚相談所には、結婚相手を探しに多くの男女が訪れている。社長の岸本はさまざまな客の要望を聞きながら、結婚相手を紹介していく。


宇都宮がマッチングした家事手伝いの女性の、お見合いの数理という考え方がとても興味深かった。

「娘があまりにも幸せになることを望まない親」という言葉が印象に残っている。

希と岸本は良い夫婦になるのだろうと感じた。


印象に残っている文

他力本願で結婚相談所にやってきて、アドバイザーという名の仲人がなんとかしてくれると思っているようでは、結婚なんてできはしない。

「女性は二六歳をピークに年齢が上がるほど結婚する確率が下がります。三〇代の独身女性の実に六割に恋人がいないというデータもあります。やはり出会いの機会は年齢とともに確実に減りますからね」

不倫は恋愛の美味しいところだけをつまみ食いする麻薬のようなもので、一度はじめると簡単にはやめられない。

「結婚相談所には、大きく分けて二種類あります。会員の希望を聞いて、データベースからお相手を探すことまでを主としたデータマッチング型と、そこから会員に懇切丁寧にアドバイスしてキューピッド役までを担う仲人型です。」

「日本の若い女性でも、一五パーセントはマザコンを許容できるということですよね。だから岸本さん、その一五パーセントの中から僕の結婚相手を探してください」

「その作戦は悪くないと思うよ。結婚相談所を使った婚活は、何よりも勢いが大切なんだ。膨大なデータがあるから、つい判断を先送りする人が少なくない。途中までいい感じでお見合いが進んでいたのに、もっといい人と出会えると思って断っちゃう人が多いんだ」

「それじゃあ結婚は、何の練習だと思いますか」沙織は頭を捻って考える。「思いやりですかね」「違います。結婚は、許す練習なんだそうです」

「だから婚活も就活と同じで、視野を広げることが大事なんです。入った時は無名の会社でも後で急成長するところもあるでしょうし、給料が高くてもブラック企業じゃしょうがないですからね」

「娘に不幸になって欲しいと願う親はいませんが、娘があまりにも幸せになることを望まない親は結構います。自分が惨めにならないように、できれば自分よりちょっとぐらい苦労する、そんな結婚相手を選べばいいのにって思っているのかもしれませんよ」

マザーコンプレックスというと、母親に対して息子が強い執着を持つことだとイメージされているが、沙織のように母親の呪縛から逃れられない女性のマザコンも増えている。女性のマザコンはただの仲良し母娘のように見えたりもするが、実は母親が娘のすべてを束縛しているようなケースもある。緩やかなマインドコントロールによって、娘は結婚やその後の人生を母親の了解なしでは決められなくなる。ましてや結婚を反対などされてしまえば、沙織のように思考停止に陥ってしまう。

『介護は身内がする方が実は難しいんです。介護される側も、どうしても身内には甘えて感情を爆発させてしまうので』

「前略 とにかく自分が死ぬときに、誰かに何かを繋ぐことができれば、それは幸せな人生だったと言えるんじゃないかな。確かに肉体的には死ぬだろうけど、自分が生きた証が、襷を受けた人の中で生き続けることができれば、素敵だなと思うんだ」


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