『おまめごとの島』

中澤日菜子さんの作品。

秋彦は東京から瀬戸内の島に移住し、友人の忠興の一族が経営するホテルで働かせてもらえることになった。


瀬戸内に島が700以上もあるとは知らなかった。

秋彦は魚の目が苦手ということで、魚屋に行ったら大変そうだと感じた。

言問子が最後の一歩を踏み切ってくれそうでとても嬉しかった。

ミネコさんはよく噂が起こりそうな場所を察知できるなと思った。


印象に残っている文

見知らぬ町。暗い夜。方向音痴な自分。やばい。このままでは「迷子三拍子」が揃ってしまう。

「ミネコさんです! この界隈に出没するメルマガばばあ!」「は? なにばばあと」「メルマガばばあ! なんでも撮るんです。で、すぐにその写真使ってメルマガ発行するの、会員に!」

働ける、ということは、仕事に集中するちからがあるということだ。集中できるだけの安定感が、こころにもからだにもあるということだ。そしてそれを周囲が認め、「仲間」として受け入れてくれるということだ。

「……そういうことも、ありますよね」大切な荷物を凹凸の激しい地面に置くように、真剣にていねいに、言った。

その壁のせいで、なんともいえない居心地の悪さが、真奈美のこころに湧いてくる。まるで、大きさの違うスナップボタンを無理に嵌め合わせたような、靴を左右間違えて履いてしまったような、そんな、「正しくない」感じ。

「……帰れる家があるなら、帰ったほうがええ。大事な人がおるなら、大事にしたほうがええ。生きるっちゅうんは、あんがい……単純なもんなんやで」

きっと人生には、他人にはどんなに愚かで滑稽に映ろうとも「そうするしかなかった」瞬間が、いくつもあるに違いない。そんな瞬間しゅんかんの積み重なりが、「生」をかたちづくっているのかも、しれない。


いいなと思ったら応援しよう!