『コイコワレ』

乾ルカさんの作品。複数の作家による螺旋プロジェクトの一環の小説。

コイコワレでは戦時中の疎開先が舞台となっている。疎開した清子と疎開先に住むリツは、理由もなく互いのことを嫌悪する。


山族と海族のように昔から理由もなく互いのことを嫌うというのは、現実世界でも起きているのではないかと感じた。
清子の母親の言葉が胸に沁みた。この言葉は、人間関係を形成していくうえで大切だと感じた。
清子が勉強や国民学校での鍛錬に力を入れて取り組む場面が印象に残っている。

印象に残っている文

「自制しなさい。好きな相手には、自然に気持ちの良い振る舞いができるもの。だから嫌いな相手には特に意識して、誰よりも丁寧に、親切になさい。あなたを差別する人たちにこそ、いっそうの礼を尽くさなければならないと心得なさい。そうすれば、相手の態度も少しずつ変わっていく。これは村を出たお母さんが経験で学んだことよ」

いや、国が人の集合であるように、一人の中にもいろんな要素があるのかもしれない。意地悪じゃないところも、二人はもともと持っていた。自分が見つけられず、二人も見せてくれなかっただけで。

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