『太陽の棘』
原田マハさんの作品。
戦後に沖縄へ従軍した精神科医エドが、過去を回想するところから物語が始まる。
戦争の勝者と敗者という複雑な関係にありながら、友情を築く姿が美しいと感じた。
ネタバレになってしまうのだが、ラストシーンにとても感動した。
帰国命令を出されたエドが、貨物船に乗って米国へ帰ろうとしている。その時、丘から7つの鏡が光っている。
脳内でこの光景を再生することができた。
このように、アメリカ軍と日本人の友情の物語が実は多くあったのではないだろうか、
絵画なら、時が経つほどに色褪せるものだ。しかし、人間の記憶は逆だ。年をとるほどに、鮮やかになる。
人間というのは、ほんとうに不思議な生き物だと、つくづく思う。どんなに暗い過去、つらい体験があっても、いつしかそれを「何かいいことがありそうな」未来へと転換していけるのだから。
アルコール依存症の患者が乱暴を働いたり罵詈雑言を吐いたりするのは、本人の意思とは無関係に、禁断症状の表れであることが多いのだが、周囲の人々はそれを理解できない。