『星に願いを、月に祈りを』
中村航さんの作品。
みんなが寝静まったあとに、テントを抜け出してホタルを観に行くという行動がとても楽しそうだ。
アキオは脇役程度にしか考えていなかったが、アキオ視点の章もあった。
アキオが再びキャンプ場に行く場面は、読んでいてとても胸が熱くなった。
ナックルボールを突き詰める少年が印象に残っている。何か一つのことを突き詰めていく姿が素晴らしいと思った。最後にまだ彼が野球を続けているということがわかって、嬉しかった。
印象に残っている文
どっちにしても小学生は、魔法にかけられたような顔をして、小学生を遂行するしかない。それを望む人がいるのなら、できる限りその希望を叶えてあげたいとさえ思う。
だけど小学生は基本的に、暇をつぶすために生きている。自分たちには手に負えないものが多すぎて、選択肢もほとんどない。巨大なものを前に、ただ目前の時間をやり過ごしているだけだ。
↑ 小学生の頃は時間の流れが今と全く違うものだった。
小学生の恋は、告白がゴールで、その先なんかは何もないのだ。
“お昼”という単語を、こんなにきれいに発声する人に、アキオは初めて出会った。
冬の授業中、今でもアキオはときどき、里崎美紀、とノートに書いては消した。その文字だけが、ずいぶん上手くなっていた。もしかしたら本人よりも上手に書けるかもしれない。
↑ とても素敵な文章だと思った。
“君はいつの日か、君が本当に届けたい人に、本当に届けたい何かを届けるんだ”
大人が若者に言えることなんて一つしかなかった。当たり前のことを、当たり前の態度で、当たり前に言う。神話みたいに流れる世の中の常識的なストーリーを、微塵も疑っていない顔をして話し聞かせる。
↑ なぜだか分からないが、年下の人にはこのような感じで言ってしまいがちだ。