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明日の君の記憶に僕はいない#3

#3見知ったはずの知らない人

朝が来た、遥香に会いに行こう、身支度を済ませ車に乗り込む
不安でいっぱいになりながら遥香の家の前に車を止め、到着を知らせる
「もしもし、おはよう、今家の前についたよ」
「わかりました、今出ます」
そう短く会話を終わらせ、遥香が出てくるのを待つ
心臓か、もしくは胃がキリキリするようなギュッと締め付けられるような不快感を覚えながらいると、遥香が玄関の扉を開け出てきた
「おはよう、体調はどう?」
と声を掛けると遥香は
「おはようございます…奏汰さんですか?」
「うん、そうだよ!君の彼氏の奏汰だよ!顔を見たら少し思い出せるかなって思ったんだけど…どうかな?」
淡い期待を込めながら、遥香に聞いてみる
「あ…えっと…ごめんなさい、思い出せないですね」
やはり顔を見ただけでは思い出せないようだ
少し落ちこんだが、今一番不安なはずの遥香の前で暗い顔はできないと思い
元気を出して遥香に
「よし!なら仕方ない!二人で言った思い出の場所をめぐってみよう!そうしたら何か思い出すかもしれないし、道中に今までどんなことをしてきたかとかも教えてあげるよ!!」
と、今日のデートプランを告げ、車に乗り込み走り出した

走る車の車内、今までどんなことをしてきたかを話した
大阪や東京、いろんなところに行ったこと、地元でよく一緒に行ったお店など、いろんな話をした
だがそのすべてにいまいちピンと来てないのか、まるで他人の恋愛話を聞いているようだった
「そんなことがあったんですね」
「そうだよーいろんなことしてきたんだよ、まぁ、聞いただけだったらあんまり思い出せたりはしないかな?」
「そうですね、そんなことしてたんだとしか…」
まぁ仕方ないかと自分に言い聞かせ地元のいったことのある思い出の場所を巡った

いくつかの思い出の場所に行ったが彼女の記憶に変化はなかった
日の暮れてきて辺りが街灯に照らされてきた頃、運転の休憩のためコンビニに車を止めていた
さすがに一日では記憶は戻らないか
明日から仕事がはじまる…会えはするが、時間は短くなってしまうなといろいろ考えていた
すると遥香が突然「ん?」と考え込むようなしぐさを見せた
「どうしたの?」
「いや、えっと…すみません、一回でいいので強く抱きしめてもらえませんか?」
「うん!全然いいよ!!」
突然のお願いだったが、かわいいお願いだったので快く引き受けた
助手席に身を乗り出し、遥香の背中に両腕を回しこむ
遥香の温かい体温を感じながらにギュッと力を込めて抱きしめた
少し苦しそうな声を出し「ありがとう」と遥香に声をかけられ入れていた力を弱めると
「思い出したよ、全部思い出した」
そう耳元でささやかれた

一瞬固まり、遥香の目を見つめる
「ほんとに?ほんとに?」
まるで子供のように何度も確認した
前が見えづらい、安堵の涙が止まらず、鼻水をすすりながら遥香をまた強く抱きしめる
少し落ち着くと、記憶が戻ってよかった、本当に良かった、そう思い、遥香を家に送ろうと車を出す
「遥香のお母さんにも伝えてあげないとだね」
そう言うと
「だね、でも少し眠くなってきた、寝ててもいい?」
「うん!全然いいよ!ゆっくりしな!」
遥香にブランケットをかけてやり、よかった、思い出してくれて、これで安心だ、そう心の不安が取り除かれ晴れやかな気持ちで車を走らせる

遥香の家の下に車を止め、遥香に起きるように声を掛ける
「おまたせ、お家着いたよ」
眠たい目をこすりながら、体を起こし、あたりを見渡して遥香が一言、奏汰に告げた
「あなた…誰ですか…?」
また遥香から記憶が消えた…

続く…

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