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33歳結婚、34歳転職、産み時が見当たらないので卵子凍結をした②

前回、なぜ卵子凍結をしようと思ったかという個人的な事情や思いを書きました。それではその続きとなる、3と4を書いていきます。

  1. 卵子凍結を思い付くまで

  2. 卵子凍結を決意

  3. いざ採卵 -> 凍結

  4. 卵子凍結を終えて

いざ採卵 -> 凍結

まずは費用感

何はともあれ卵子凍結について知らないといけない。とにかく私がまず何よりも知りたかったのは費用でした。私たちに払える費用感なのだろうか?
そこでインターネットで東京、卵子凍結みたいなキーワードでいくらか検索して、概算を出しているクリニックのウェブサイトを読みました。確か初見で読んだ時には60万程度と認識したような気がします。うーん、安くはないけど、二人で海外旅行2回ほど我慢した金額くらい?COVID-19でこのところ海外行けてないわけだから、その分を卵子凍結に充てるみたいな考えでやってみる?という感じで、とりあえず費用問題はクリアと考えました。

不妊治療クリニックの説明会へ

そしたら次は卵子凍結はどのようなことをする必要があって、どのくらいの期間がかかって、など知らなければならないことが山のようにありました。そのために、クリニックが啓蒙的な意味合いも含めて行っている説明会に参加することにしました。卵子凍結の説明会です。
夫と二人で説明会に行ったら、驚いたことに男性は一人もいませんでした。夫は気まずそうでしたが、講義形式なので静かに隅に座って二人で並んで説明を聞きました。そこでまずわかったことは、私たちの場合は結婚しているので、卵子凍結ではなく受精卵の凍結をすべきということでした(受精までフェーズを進めて凍結しておいた方がその後妊娠の確率が上がる)。なので男性が居なかったんですね。卵子を受精させてから凍結するのは、また別途体外受精の説明会があるとのことで、私たちは最初にそちらに行くべきでした。でもそれも行って話を聞かなければわからなかったことだったし、むしろ卵子凍結の説明会とはいえ男性も知っておくべきことが盛りだくさんで、夫は一生懸命メモを取っていました。クリニックを後にして、こんな大事なことを男性は知る機会がなくていいのだろうか?女性においても、この話を20代前半に聞けていたら人生の選択が変わるのではないか?と興奮気味に議論しながら帰宅したのを覚えています。
とにかく、そんな大切なことを無料で講義してくれているそのクリニックに尊敬の念を向けざるを得ないし、私もそんな意義のある仕事がしたい・・・とも思いました。

その感動はさておき、卵子凍結については、正直言って1回の説明で理解できたかと言われると出来なかったと思います。その時はわかった気になっていましたが、詳細は実際に診察や治療が始まってからようやく掴んでいったような気がします。初回の説明会で聞いて大きな学びになったのは、人体というのはまだまだ未解明なことだらけで、特段この妊娠に関してはわからないことだらけであるということ。妊娠が奇跡なのがそういうことであり、逆に言うと不妊の理由もまだ全然解明されていない。

診察、治療の開始

その後に体外受精の説明会にも参加し、ようやく初診に辿り着きました。数回の診察をしながら排卵誘発の治療法を決め、すぐさま投薬や注射が始まります。クリニックによると思いますが、私の選んだクリニックはおそらく人気のところなので予約したとて待ち時間も長く、また極限まで効率化されたフローになっているので、なんだか自分がベルトコンベアーに乗っているかのような気分でした。そして痛感したのが、卵子凍結をするということはあくまで私の意志であり、クリニックの勧めではないということ。なのでクリニックはある意味受け身のスタンスです。そして卵子凍結は排卵のスケジュールが命です。生理開始から排卵まで1日も遅延が許されないスケジュールとなるのですが、自分でそのスケジュール管理をしないとタイミングを逃し、最悪採卵できないということもあり得ます。なので実際に採卵誘発が始まってからの日々は、緊張感がありました。そのため、診察の度に、次のSTEPはこういうことですよね?私の理解は合っていますよね?と確認していました。

排卵スケジュールに悩まされて

排卵直前に採卵するわけなので、排卵日がいつになるかが非常に重要になります。そしてそれは生理が始まらないとわからないし、始まってからも何度か通院して排卵日を丁寧に予測します。仕事をしながらこんなに何度も通院できるかっていう話です。実は私は、転職の直前に採卵する計画を立てていました。つまり前職の有休消化時期にやっちまおうという計画です。我ながらこの旅行も行けないCOVID-19時代、有意義な有給の使い方だと思っていました。

ところが、普段通りに生理がくれば有給中消化に採卵出来たはずが、色んな緊張感が影響してしまったのか生理が1週間も遅れてしまったのです・・・。となると、どうやら採卵できそうな日が有給終了後、つまりは新しい会社に入社して3日目あたりになってしまいそう。入社3日目で休ませて下さいと言いづらい・・・。でも、ここまで色々準備してきたのに時期を見送るのももったいない。どうしたものか。

そして何より、刻一刻と私の卵子は老化をしていて数も減っているわけです。キャリアを犠牲にしたくないという側面ばかり話しましたが、当然子供も産みたいという思いがあってこの選択をしているんです。
そう思って冷静になり、新しい会社に入社早々すみませんが婦人科系の手術を受けたいので休ませて下さいと言いました。良い人たちが多そうだと思って決めた会社だったので予想はしていましたが、快くOKしてくれました。

採卵日

生理・排卵が予想外に遅れるという番狂わせがあったものの、ようやく採卵日に漕ぎつけられた日は、ある意味この日が本番のようなものなのに、もう峠を越えたような気分でした。
私のAMH値(卵巣に残っている卵子の数の値)は2.1と決して高いとはいえない数値だったのと、全然卵子が採れなかった時に落ち込みたくないという予防線を張って、どうせ1回でそんなにたくさんの採卵はできない。2回くらいは覚悟しておこう。と思っていました。また、医師も過度な期待をさせられないからか、診察でも下手な期待を持たせるような発言をしないよう気をつけているようでした。
採卵は、手術です。選択制ですが私は全身麻酔を希望し、手術前には点滴を打ち、手術自体が初めてだったのでなんだか浮き足立っていました。

手術台にのぼり、程なくして麻酔を打たれたのでそこからはもう何も覚えていません。麻酔の前に、採卵してくれる女医の先生と少し会話しましたが、男勝りというか気概のある雰囲気で、女の先生ってかっこいいな・・・と思ったのが最後です。ベテランの風格もあったので、安心感がありました。

麻酔から醒めて、鈍い身体を起こすと若干下腹部に痛みがあり、本当に手術をしたんだ・・・という実感が湧いてきました。少しすると培養士の方が個室の病室へ説明に来てくれました。

「いや〜たくさん卵採れましたね!お疲れ様でした」

ええっ・・・そうなんだ・・・なんとなく1回でそんなに採れないだろうと勝手に思っていたけどそんなに採れたんだ・・・!

実際に21個もの採卵ができました。身体は人それぞれ全員違うので、平均値と比べてもあまり意味がないですが、一般的な平均値を大きく上回る個数です。
卵子凍結を検討し始めてから採卵までおよそ3ヶ月程度。その間、何度もクリニックへ通い、長い長い待ち時間をやり過ごし、ビビりながらも自分で筋肉注射を打って、こう書くと大した努力でもないけど、着実に一つずつTodoをこなしてきた結果、効率的に採卵ができたというのはとても嬉しかったです。
AMH値もそれほど高くなかったのに何がよかったのだろうか?その理由は分かりません。分からないから、辛い思いをしている方がたくさんいます。強いていうならば、クリニックが考えてくれた採卵誘発メニューが私の身体にはぴったりハマったということくらいでしょうか。

体外受精 -> 凍結へ

採卵を終えたら、そこからは夫の精子との体外受精が始まります。ここからはもう培養士の方々にお任せで、受精の進捗をメールで送ってきてくれます。21個の卵が、さまざまな理由で少しずつ脱落していきます。あ〜せっかくの卵がもったいない〜という気持ちになりますが、見守ることしかできません。結果的には7個の受精卵が凍結まで漕ぎ着けました。それでも十分な結果です。私たちはとても幸運なことに、1回の採卵、体外受精で7個の受精卵を凍結することができたのです。

専門的なことは私は書けませんが、あくまで凍結するレベルの受精卵になったものが7個となっただけで、妊娠が確約されたわけでは全くありません。将来この受精卵を体内に移植するわけですが、そこで何らかの原因で全て着床しないということも十分にあり得ます。本当に、確かなことがない領域なのです。ただ私はそれでも可能性を未来に先送りできる一つの有効な手段だと思えましたし、経験としてやってみてよかったと思っています。

卵子凍結を終えて

費用の振り返り

  • AMH検査 2,200円

  • 初診 / 超音波検査 / IVF検査 / 感染症検査 29,280円

  • 再診 / 飲み薬 / 注射 / 超音波検査 / LH精密検査 / E2精密検査 / FSH精密検査 25,540円

  • 再診 / 飲み薬 / 注射 / 超音波検査 / LH精密検査 / E2精密検査 13,640円

  • 採卵 294,690円

  • 再診療 / 超音波検査 3,450円

  • 培養代 283,250円

計638,410円

*凍結までなので、この後受精卵(胚)移植したらさらに費用が発生します
*夫の精子検査等はまた別途費用が発生します
*各市区町村にて助成金などの補助もあります
*2022年4月から保険適用されますが、この金額は適用以前の金額です

卵子凍結で苦労したこと

  • 費用(上述の通り。高いです)

  • 仕事・予定を排卵日に向けて全力で調整しなければならない(すみません明後日休みます、みたいなことを言わなければならない)

  • 高頻度でクリニックへ通えない場合、自分で注射を打つ必要がある(決してやってやれないことはないけど、は〜今日の夜注射か、という感じで憂鬱ではあった)

  • 人によっては、採卵後OHSSという症状が出る(私も若干発症し1.5kgほど太りましたが、生理が来たら戻ります)

最後に

受精卵凍結をしたからといって、60歳で妊娠ができるわけではありません。私のキャリアのタイミングを見て2-3年の間には子宮へ戻す予定です。私は20代にあまりライフプランについて熟考してこなかったタチなので、なんだか人生の色々が30代に凝縮されてしまっているのですが、後悔はないというか、私にはこのスピードの歩み方しかなかったんだろうと思っています。何にせよ私の人生はこの時間軸でしかなかったと思うけど、でも、25歳に卵子凍結という選択肢を知っていたら、というか卵子の老化について知れていたら、もしかしたら人生の歩みは少し違うものになったかも?とは思いました。まあでもその時まだ結婚はしていなかったし、その当時この費用は払えなかっただろうから結局いまと同じ歩みをしたのかもな、とも思います。なんというか、20代の自分に、今ようやくできるようになった考え方や決断はどうせできなかっただろう、と思うのです。

2022年4月から保険適用もされるようになります。金銭面での間口は広がるけど、それでも、高齢の妊娠を確約する方策ではありません。おそらく著しいスピードでどんどん進歩していくのだと思いますが、結局は自分がやる意味があると思えるかどうか。これに100万円払える人もいれば、10万円でもやりたくないと思う人がいる。卵子凍結に限った話ではないですね。私はこの2年ほどの間に、保護猫を飼い、結婚をして、家を買い、卵子凍結をしました。どれもそれなりの決断が必要なことたちでしたが、意外と悩みすぎずに直感的に決断してきました。逆に20代から30代にかけての時期は、悩みに悩み、熟考を重ねていて何もできなかった、むしろ熟考の末にやったことはほとんど裏目に出てしまったような気がしますね。

ちょっと話が逸れましたが、私は卵子凍結をして満足しています。もしかしたら、たくさん採卵できたからこう言えるのかもしれません。一つも採卵できなかった時に同じような感想を持てたかどうか。きっと持てなかったでしょうね。

あと一つ感じたのは、採卵の過程で夫が登場することはほとんどありません。別途精子の検査や採精はしてもらいましたが、私がやるべきことと比べると、1:9くらい。これはジェンダーの話というよりは、身体の役割の違いによるものだと思うのですが、こんなにも夫の入り込む余地はないんだ、と思いました(クリニックが感染予防対策として一人で来て、といっていたのもあるかもしれませんが)。そして、時折ふと「私のキャリアのために」夫はクリニックまで来て精子検査をする羽目になった、みたいな気持ちになることもあったのですが、いかんいかん、これは二人の決断だし勝手にこちらが卑屈になるのは一番無意味。何より夫はそんなことを思っていない。そう思いながら最後までやり切りました。

何にせよ、私は変わらず自分のキャリアも大事にしていくし、子供も一人は産みたい。そういうことが、現代医療や技術で解決できることなら積極的に取り入れていく。今後もそういう考えのもと、人生の駒をすすめていきたい
と思います。


最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。


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